ここ十数年、新築戸建て住宅ではオール電化仕様が増えています。
中古住宅や中古マンションではガスを併用している建物が多い状況ですが、光熱費は「オール電化住宅」と「電気・ガス併用住宅」のどちらがお得なのでしょうか。
また、電力会社やガス会社も試算を公表していて、見るだけでも混乱してしまいます。ここでは統計上の数字を示しますので、一つの判断材料にして頂けましたら幸いです。
オール電化とガス併用のどちらがお得かを考えるうえで、まずはそれぞれの価格を比較してみます。
ここでは、エネルギー単価で比較してみます。
エネルギー単価とは、エネルギー単位ごとの価格のことですが、ここでは、消費電力(kW)に使用時間(h)を乗じて算出される消費電力量(kWh)を用いた1kWhあたりの価格を比較します。
石油連盟が試算している「1kWhあたりのエネルギー別単価比較」によると、エネルギー単価は以下の通りになります。
まず、3人世帯の1ヶ月あたりの光熱費をサンプルとして比較してみます。
まずは、電気とガスを併用している一般家庭の光熱費を下記に提示します。
【電気・ガス 併用】
電気代 約11,000円
ガス代 約 5,000円
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小計 約16,000円
【オール電化】
電気代 約15,600円
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小計 約15,600円
オール電化のほうが僅かですが、安いことがわかりました。
とはいえ、ガスには都市ガスとプロパンガスがあります。都市ガスはプロパンガスより料金が安いので、世帯によってはオール電化よりも電気+都市ガスのほうが安くなるケースもあります。
オール電化にする場合は、給湯機をエコキュート(高効率給湯機)、キッチンコンロをIH(電磁誘導加熱)クッキングヒーターにするのが一般的です。初期費用は、導入する機種にもよりますが、工事費込みで50~70万円程度です。さらに、蓄熱暖房機を導入した場合は100万円を超えることも少なくありません。
一方、ガス(都市ガスの場合)併用の場合は、ガス給湯器とガスコンロを設置するのが標準です。こちらも機種によりますが配管等の工事費込みで20~45万円程度が相場となっています。プロパンガスの場合でも、給湯器とガスコンロで使用する場合の工事費は15万円程度が相場であるため、オール電化の初期費用は、ガスに比較してかなり高額であることがわかります。
オール電化が向いている人
プロパンガス供給エリアの方
一般的に、プロパンガスは都市ガスに比べてガス代が高い傾向にあります。したがって、プロパンガスの供給エリアの場合は、電気とガスを併用すると割高になる場合が多く、オール電化にすることで光熱費を抑える可能性があります。
仕事などで日中家にいないことが多い方
オール電化用の電気料金プランは、昼間の使用料金が高く、夜間は安くなる設定です。
このため、仕事などで日中は家を空けることが多く、昼間の電気使用が少ない人にとってはオール電化の割安感が大きくなるでしょう。
小さな子どもや高齢者がいる
ガスコンロは実際に炎が出るため、キッチンに熱がこもりやすく、空気も汚れます。
さらに、火が燃え移って火事になるリスクもありますし、ガス漏れが生じる可能性もあります。
オール電化でIHクッキングヒーターにすると、それらのリスクが回避できるので、小さなお子さんや高齢者がいる家庭にとっては安心感が生まれます。
※IHのような電気機器にも漏電などがあるため、絶対に火災が起きないということではありません。
ガス併用が向いている人
都市ガスを利用している方
都市ガスを利用している家庭であれば通常、オール電化より光熱費が安くなる傾向があります。
初期費用を抑えたい場合
電気とガス併用の際に導入される給湯器やコンロに比べて、オール電化のエコキュートとIHクッキングヒーターは工事費を含めても割高になります。
初期費用を抑えたい場合にはガス併用のほうが良いでしょう。
強火で料理をしたい方
料理が好きな人にとっては、ガスコンロが使えるガス併用のほうが向いているかもしれません。
IHクッキングヒーターの場合は使用できる調理器具が限定されてしまいます。
耐熱ガラスや土鍋は使えません。また、IHはフライパンを振るような炒め物には不向きです。また、ガスコンロのほうが火加減を見やすいというメリットもあります。
まとめ
家を建てる際、オール電化にするか、電気とガスの併用にするかは悩ましい問題です。
それぞれにメリットとデメリットがあるので、目先のコストだけにとらわれず、家族のライフスタイルや長い目で見て、どちらが良いのかを考えてみる必要があるでしょう。
※本記事の掲載内容は公開後に制度・内容・利用料金等が変更される場合がありますので、それぞれのホームページなどで最新情報の確認をお願いします。