家を建てる前に行う儀式「地鎮祭」。 その名前は聞いたことがあるものの、何のために行う、どんな儀式なのか知らない人が多いのではないでしょうか。
ほとんどの人にとって、地鎮祭を行うのは初めてのこと。不安に感じることも多いでしょう。
地鎮祭とはどういう行事なのか、必ず行うべきものなのか、行うとしたらどのような流れなのかをお話したいと思います。
地鎮祭とは?
地鎮祭とは、家を建てる前に氏神様(居住する地域の神様)を鎮め、土地を使用する許可を得る意味があります。許可を得ることで祟りを防ぎ、工事中の安全や、完成した家の繁栄を祈ります。
神式で神主さんが行うケースが一般的ですが、熱心な檀家さんでしたら仏式で、キリスト教徒であればキリスト教式で、地鎮祭に代わる「起工式」を行うケースもあります。
地鎮祭はやらなくてもいいの?
地鎮祭を行うことは義務ではありません。地域によって風習が異なりますが、時代の変化に伴い、施主の意向を重視して地鎮祭を行わないケースが増えています。また、計画段階で地鎮祭の費用を諸経費に含んでいるハウスメーカーも少なくありません。全てハウスメーカーが取り仕切ってくれて、当日は手ぶらで参加するだけというケースも多いようです。
地鎮祭の日取りは?
縁起を担ぎたければ、地鎮祭は六曜で吉日とされる大安や友引、先勝の午前中に行いましょう。
地鎮祭は一般的に、「大安」「友引」「先勝」といった六曜の吉日の、午前中に執り行うことが多いようです。
「仏滅」がお祝い事に不向きな日であることは広く知られていますが、「赤口」も避けた方がいい日とされています。
午の刻、つまり11時から13時頃までは良い時間とされているものの、赤という文字から火事や血などを連想させるため、地鎮祭に関しては仏滅以上に不吉な日と考える人もいます。できれば避けたほうがいいでしょう。
・・・とはいえ、毎日忙しい中で関係者全員のスケジュールを合わせるのは大変なこと。最終的には自分たちの気持ち次第です。建築関係の行事は「十二直」に基づく建築吉日を重視する人もいます。いずれも、参考程度に考えればよいでしょう。
地鎮祭に向けて、何を準備したらいい?
地鎮祭に必要なお供え物は本来、施主が用意するもの。最近は工務店やハウスメーカーが準備するケースが増えています。地鎮祭は基本的に、神主さんと工務店やハウスメーカーが準備をしてくれるため、施主は当日、神主さんへのお礼である「初穂料(玉串料・神饌料)」を持参するだけというケースが一般的です。
当日は、米や奉献酒、塩、鯛やするめ、昆布といった海の幸、野菜、果物などの準備が必要です。
これらの一部またはすべてを施主が準備するケースもあります。笹竹や注連縄、砂、白木のくわ・すき・鎌、榊などは工務店やハウスメーカーが準備します。
また、地鎮祭が終わると基礎工事に着手することになります。工事車両の駐車や騒音など、ご近所には何かと迷惑をかけてしまいますから、このタイミングで向こう三軒両隣に挨拶まわりをするケースが多いようです。施工会社がタオルなどの粗品を持参しているでしょうが、施主サイドでもちょっとした挨拶の品を用意しても良いでしょう。
地鎮祭の初穂料の相場、のし袋の書き方は?
水引が印刷されたタイプののし袋に入れる金額は、一般的に1万円まで。地鎮祭のために祝儀袋を用意するなら、水引を取り外しできるタイプがベストです
・初穂料の相場
地鎮祭は基本的に、神主さんと工務店やハウスメーカーが準備をしてくれるため、施主は当日、神主さんへのお礼である「初穂料(玉串料・神饌料)」を持参するだけというケースが一般的です。
初穂料の相場は、3~5万円。多いところでは10万円が相場という地域もあるようですが、いずれにしても奇数の切りの良い数字が好まれる傾向にあります。工務店やハウスメーカーの担当者が、相場を教えてくれるでしょう。
・のし袋の書き方
のし袋の水引(みずひき)は、結婚祝いなどに使われる「結びきり」と出産や進学などに適した「蝶結び」、関西より西でよく使われ、結びきりと蝶結び双方の意味で使える「あわび結び」の3種類があります。地鎮祭では基本的に「蝶結び」が使用されます。
水引の上段には一般的に「初穂料」もしくは正式に「御初穂料」と書きます。毛筆、もしくは筆ペンを利用しましょう。「(御)玉串料」「(御)幣帛料」「(御)神饌料」と書くこともあります。
下段には、上段の名目よりも少し小さめに施主の姓を記入します。フルネームでも構いませんし、土地や建物が共有名義の場合は連名で表記しても構いません。複数人数の場合は、中央に代表者の氏名を、左側にそのほかの氏名を書きます。4人以上になるときは、施主の名前の横に「他家族一同」などと書いてまとめるとよいでしょう。中袋の表面には入れた金額を旧字体で、裏面には住所と氏名を書き、肖像画が表になるように新札の紙幣を入れます。のし袋はあらかじめ折り目が付いていますが、祝い事のため、下の折が上になるように折りましょう。
地鎮祭当日の流れ、服装は?
当日は、極端に派手な服装や露出の多い服装、だらしのない恰好でなければ、普段着で問題ありません。
家を建てる土地にテントを建て、祭壇を組み、お供え物を並べたところで、神主さんが地鎮祭を執り行います。
式次第は主に「修跋の儀(しゅばつのぎ)」「降神の儀(こうしんのぎ)」「献饌 (けんせん)」「祝詞奏上(のりとそうじょう)」「四方祓(しほうはらい)」「地鎮の儀(じちんのぎ)」「玉串奉奠(たまぐしほうてん)」「撤饌(てっせん)」「昇神の儀(しょうじんのぎ)」「閉式の辞(へいしきのじ)」「直会(なおらい)」と進めます。最後の直会とは簡単な食事のことで、最近は省略するケースも多いようです。
地鎮祭を行わなくても家は建ちますが、着工前に地鎮祭を行うことで、その土地に住む神様に受け入れてもらい、工事の安全と家の繁栄を祈願することができます。施工する関係者の士気も高まることでしょう。分からないことだらけで不安かもしれませんが、基本的には神主さんや施工者が取り仕切ってくれます。家を建てる際は、貴重な人生経験として、地鎮祭を行ってみてはいかがでしょうか。